某施設に訪問フットケアのお客様 I様 80代女性 自立歩行(歩行器使用)認知症

トラブルは巻き爪、爪が伸びてくると食い込みが強くなり、痛みが出るため1ヶ月に1度痛みの緩和を目的としてフットケアをご利用

8ヶ月前よりサービスをご利用

巻き爪の痛みと確認のやりとり

直近のケアでのこと。

車椅子に座っていらっしゃったので、スタッフに確認をしたところ、朝の機嫌が悪く動いてくれないので車椅子で移動していますとのこと。

そのまま座った姿勢でフットケアに入りました。

いつもの巻き爪の食い込み部位を押して確認すると、険しい表情。

痛みがあることが確認できました。

お声掛けをしながら、巻き爪のケアを進めていきました。


※写真はイメージです。

角の食い込み部分のケアに入ると痛みの訴えあり。

続けると、そのうちに痛みから、私への怒りに気持ちが変化

少しずつ爪中の角質を除去し、角の処理を済ませると表情が穏やかになるものの、相変わらず「痛い!」と訴えます。

私はお顔を見ながら、お声掛けをしながらケアを進めます。

ごめんなさい。

痛いのはよく分かるのですが今日、ケアしておかないとさらに痛みが出るので我慢してくださいね。

1ヶ月に1度しか来ないので、今日だけ我慢してください。

もう少しでラクになりますよ。

そして、ケアが進むと痛みの部位に触れても、訴えがなくなり表情も変わらなくなってきました。

保湿を兼ねた、フットリフレで指周りを刺激しても痛いとの訴えなし。

痛みが緩和したことを確認してケアを終了しました。

施設スタッフが驚いたケア後

I様 中西さん(名札してるのので)痛いと言ってるのに、辞めないなんてひどいじゃない。

中西 ごめんなさい。
   今日、ケアしておかないと次まで長いので、痛い思いさせてしまいましたね。

I様 次はいつ来るの?

中西 7月です。私、痛いことしてるのに続けて鬼ですね(笑

I様 鬼どころじゃないわよ!イノシシよ!

中西 鬼よりイノシシの方が強い感じですか?(笑

I様 そんなの分かる訳ないじゃないの!!

こんなやり取りをして、笑ってケアを終了しました。

ごく普通の会話です。

今までもケアの時や、終了時には会話を交わしていたので特に何も思っていませんでした。

しかし、スタッフから驚きの言葉が・・・

「中西さん、会話が成立してる」と言うのです。

どうやら、普段は会話のキャッチボールはできていない様子です。

なぜ会話のキャッチボールができたのか?

私の推測になります。

巻き爪は食い込んで皮膚に当たる部位がピンポイントで痛みが出ます。

その痛みの部位の確認を、点で確認をしながらケアを進めました。

ケアを進めながらも、先ほどよりも痛みの程度は和らいでいるのか?

変化がないのか?と問いかけ続けました。

おそらく、I様の頭の中はフル回転です。

うまく痛みの程度や部位を伝えることはできませんでしたが、伝えようと努力はされていたはずです。

痛みのある巻き爪のケアが刺激になり、「知覚が覚醒」したのだと思うのです。

さらに、どこがどう痛むか、私からの問いかけも加わり神経と脳の回路が繋がったのではないでしょうか?

足爪ケアの仕上げは、保湿をしながら足首や足関節の調整を行なっています。

短時間ではありますが、足裏のアライメントが整い、メカノレセプターの働きもよくなったはずです。

そして、足から脳内ネットワークの活性化に一役買ったのではないでしょうか?

その結果が「会話のキャッチボール」の成立です。

知覚を活性化させる

認知症の症状のひとつに、「知覚の鈍化」があります。

高齢になると、季節を感じられなくなったり、味覚が衰えたりするのも知覚の鈍化が原因かもしれません。

私たちフットケア施術者は、足に触れることができるのが強みです。

足は体全体から見れば面積は狭いものの、足裏には反射区が多くあることからも分かるように、知覚を活性化するには近道できる体の部位だと思うのです。

五感と言いますが、「バランス感覚」と言う非常に大切な感覚もあります。

その、バランス感覚に密接に関係しているのが足なのです。

6月14日認知症予防の日と、足の感覚器

I様のケアでは、フットケアによって足からバランス感覚を調整しながら、「痛み」と言う刺激を感じ、言葉というコミュニケーションで脳へ、トリプル刺激を加えたようなものです。

実は、会話がはずむことは私が行なっている施術では、決して珍しいことではありません。

普段、言葉数が少ない方が、笑って会話をすることはよくあることです。

認知症の方との会話

認知症が進み、コミュニケーションをとることが困難になったと思うことがあるかと思います。

もしかしたら会話が成立しないと思っているのは、伝える側が伝えたいことを理解してくれないから使う言葉なのかもしれません。

どなたでも伝えたいことがあります。

認知症の方でも、お話に集中をして耳を傾ければ大抵、内容は理解できるものです。

「あなたの言いたいことを真剣に聴きます」

と言う姿勢が、脳には会話の相手として認識されるのだと思います。

しかし分かっていても、忙しい日常だと中々、できないのも現状でしょう。

毎日、同じ話の繰り返しという方もいらっしゃると思います。

月に1度のフットケアが、どの程度の認知症のリハビリになるかは不明です。

しかし、行なっている内容は、心身のバランス感覚を取り戻すことに効果があるはずです。